farewell56

402854_3062029266567_11944966_n目次はこちらです。

1951年、シカゴ大学、アボットホール。

大学構内の売店に並ぶ駄菓子の中に、今年もまた砂糖とスパイスをまぶしたプレッツェルが入荷されるシーズン。12月。

8歳になる息子のアーモンドが、その夜も被験者を務める「報酬」としてねだった(先ほど、彼はあっというまにそのひと袋を平らげてしまったのだが、以前買って途中まで食べて、湿気ないようにクリップでとめて、自分のデスクの抽斗にしまっておいた)同じものを、ユージーンもまたつまんでいる。ラボのキッチンで淹れた濃いコーヒーが今夜もお供だ。プレッツェルの袋には、もみの木の枝がデザインされ、枝には赤いリボンが結ばれ、シナモンスティックが金色のリボンで巻きつけられてもいた。「1度焼き上げたプレッツエルをマリネした後、シナモン、ナツメグ、ジンジャーなどのスパイスで味付けし二度焼きした」とも謳われている。 続きを読む

Farewell 55

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Farewell55

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話が中断し、酔いと眠気の入り混じった気だるさが面々の頭を支配し始め、会がもうすぐお開きになりそうだという気配を誰もが感じていた。テーブルの上には、中途半端にワインが残ったグラスが人数分と、ナッツやチーズの残った皿、そして各々の取り皿や割り箸、フォークなどが散乱していた。今日の主賓であったジョが、由美子の腕の振るった乞食鶏に金槌を振り下ろしてから、すでに5時間が経過しようとしていた。

しかし、「あっ」という、みつるの、ほとんど素っ頓狂とも言える声がその空気を引き裂くように響き渡り、一同は目が覚めたよな思いを味わう。

「ああ驚いた。みつるちゃん、一体どうしたの?」

由美子が驚いて目を瞠り、何事かと問いかける。

先ほどまでやはり半ば眠い目をしていたみつるだったが、いつのまにかスマートフォンを手にしておりそれを凝視していた。会話が途切れたあたりから、静かに一人でそれをテーブルの下の膝の上に出して眺めていたらしい。

「塔子さんが、今、上海に向かってます」 続きを読む

小説のような・つぶやきまとめ(その8)

kako-evfeof9stihhyabt以前のポストの続きになります。かつて知り合いだったが、まとまった時間が過ぎて、今はまったく関わりのない二人。それでもインターネットがある時代 だと、お互いになにをしてるの か、垣間見れてしまう。見かけの上ではなんの関わりもなくても、ネットを通じてお互いの考えを読んだりすることで、なんとなく気持ちが通じ合ったりしてい る、みたいなこともあるかもしれない、と、こういう震災後の世界を生きてるときに、それはパラレルワールドなのか夢の世界なのか、テレパシー?みたいな妄 想として考えていたようなことを小説にしながら(←小説のページのリンクになってます)、あとはやはりそういう異世界や夢にまつわることも、日常のメモみたいに小説の主人公の胸の内の記述として ツイートしてきたものになります。その7からの続きになります。2015年の10月あたりのツイートから開始で、少しずつ時間的に現在に近くなっていきます。(ちょうど去年の今頃ツイートしていたものから今回はスタート)

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farewell 54

最初から読む→目次IMG_20150912_141017

まず、記憶として一番残っているのが、ずいぶん立派な仏壇が、扉を観音開きに開けたまま、金箔を張り巡らせてあるその内部が鈍い黄金の光を放ち、その二間連なる座敷の一方の中央に鎮座していたということだ。炎はついていないものの、使用した形跡の残る(とはいえ小さくなりすぎているということもない)蝋燭が数本、燭台にたてられたままになっており、欠かさず日々線香を焚いているために部屋に匂いが染み付いているのか、あるいはその日も焚いた残り香が漂っているのか、そういう抹香めいた匂いが鼻をつき、そして、和綴じされた読経のための教本が、つい先ほどまで使われていたかのように開かれて置かれたままになっていた。男性物と女性物の数珠もそれぞれひとつずつ傍らに置いてあったように記憶している。 続きを読む

Farewell 53

最初から読む→目次

IMG_3146高信は、由美子にも、みつるにも内緒にしているその話を、結局しなくてはならない気がしていたし、そして、するなら、今だ、今しかないという思いに囚われる。

ジョとみつるの、彬彦とかつての恋人の夢についての話への考察が一通り済んで、由美子がみなに新しいグラスを用意して、ミネラルウォーターを注ぎ始めた。そしてみつるの持ってきたケーキを小皿に取り分けてほしいと高信に頼み、みつるがわたしがコーヒーを淹れます、と席を立った。

コーヒーが真っ白なコーヒーカップにサーブされて、みつるの買ってきた、新鮮なベリー類がふんだんに使われたパイが、コーヒーカップとお揃いの真っ白なケーキ皿に乗り、それらがすべてテーブルにきちんと並んだ。みつるの持ってきたもうひと箱のデザートであるチョコレートは、脚のついたケーキを飾る台のような、鮮やかなミント色の皿に美しく並べられてテーブルのセンターに置いてある。

先程までの会話の緊張は途絶えて、酔いからもそれぞれが覚めはじめ、部屋はいっとき、空白地帯めいた落ち着きに支配される。 続きを読む

小説のような・つぶやきまとめ(その7)

↑これらのポストの続きになります。かつて知り合いだったが、まとまった時間が過ぎて、今はまったく関わりのない二人。それでもインターネットがある時代 だと、お互いになにをしてるの か、垣間見れてしまう。004
見かけの上ではなんの関わりもなくても、ネットを通じてお互いの考えを読んだりすることで、なんとなく気持ちが通じ合ったりしてい る、みたいなこともあるかもしれない、と、こういう震災後の世界を生きてるときに、それはパラレルワールドなのか夢の世界なのか、テレパシー?みたいな妄 想として考えていたようなことを小説にしながら、あとはやはりそういう異世界や夢にまつわることも、日常のメモみたいに小説の主人公の胸の内の記述として ツイートしてきたものになります。その6からの続きになります。2015年の6月あたりのツイートから開始で、少しずつ時間的に現在に近くなっていきます。
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